
溺れてみたい
第2章 ニ
喜ぶと同時に私は、目に溜まった涙を目の端から溢した。
しかし――
椎名の顔を見なければ良かったと思う事になるとは、思ってもいなかった。
「じゃあやっぱり、兄妹一丸となって由来ちゃんを愛さなくちゃね?一人占めなんてしないで、早く兄妹に紹介するよ」
「えっ……違……」
何でそうなるの?
家族のところに帰して欲しいって言ってるのに。
「由来ちゃんも欲張りだなぁ。寂しいふりするってことは、いっぱい愛されたいってことだもんね?まさか貧乏な家に本気で帰りたいなんて思わないよね?」
「っ……」
「ウチにいれば何も不自由なく暮らせるよ。食事も高級食材ばかりだし、何百万の服やバックだって買ってあげるからね」
……おかしい。
コイツ、狂ってる。
これが富裕層と貧困家庭で育った人間の違いなの?
