
溺れてみたい
第1章 一
玄関に入ると、洋館が意外に古びていると気付いた。
それに中は明かりも点けられておらず、真昼だというのに薄暗く気味が悪い。
何ここ。まるで幽霊屋敷じゃん……。
「ついてこい」
「えっ、靴は?脱がないんですか?」
私の質問を無視して男が再び歩き出すと、渋々私も後ろをついていく。
そして廊下の先にある大きな扉の前で男が立ち止まると、足を止めて鼓動を速めた。
「奴らがいるのは、この中だ。行くぞ」
男が扉に右手で触れると、キシッと軋む音が鳴った。
歩く度、廊下も軋んでいたし、どうなってるんだろう。ここ。
本当に人が住んでるんだろうか。到底そうは思えないんだけど……。
