眠れない夜を抱いて
第2章 その男、αにつき
だから
α性の奴は、プライドが高くて自己顕示欲の強い奴しかいないと思ってた
どんな内容であれ、Ωに謝るなんてあり得ないと
「あ、そうだ!さっきの話」
「え?」
「抑制剤、持ってる?」
「あ、うん」
「すぐ飲んで!俺がまともなうちに」
思わずビクッと体が固まってしまった
そう言えばフェロモンがどうとか言ってた
本当にこのまま発情期が来てしまうと洒落にならない
目の前のこいつだけでなく
近くにαがいたら自分の身が危険に晒される
急いで鞄から取り出した薬を口に入れ、貰ったコーヒーで流し込んで
…小さく溜め息を吐いた
こういう時、自分がΩだと言う事実に嫌気が差す
受け入れた筈の性が憎くなる
「ごめんね、急かしちゃって」
謝られても困る
むしろ感謝すべきなのかも知れない
だけど
「あんた…、変わってるね」
「え、なんで?」
「αに見えない」
「あはは。良く言われるよ、それ」
そう言って笑った彼は
やっぱり変だと思った