眠れない夜を抱いて
第3章 友達じゃなくて
にのに連れて来られたのは、カウンターだけの小さなお店だった
かなり年季が入った感じだけど、清潔感がある
と言うか
飲み屋なら大抵カウンターに色々と置いてあるものだと思ったものが何もなくていっそ精々しいくらいだ
「おー、にの。いらっしゃい」
ふにゃんとした笑顔でカウンターの向こうから出迎えた彼に
「来たよ、大野さん」
俺にはまだ見せてない笑顔でにのが応えた
何と言うか、信頼しきってるような
安心してるような、…そんな顔
まだ見れなくて当たり前なのに、少しだけ苛立ちを覚えた
「珍しいな。今日は1人じゃないんだ」
“大野さん“ と呼ばれた彼が俺に視線を向ける
「あ…、はじめまして。俺、相葉って言います」
そんな胸中を隠すように、慌てて笑顔を作った
一瞬、彼の視線が鋭くなった事に気付いたけど、そこは敢えて気付かないフリをする
「珍しいでしょ?友達」
「へぇ。お前にも友達出来たんか」
「そう、出来たの」
何だかにのの口調も、甘えてるように聞こえるのは気のせいだろうか