眠れない夜を抱いて
第4章 瀬戸際の優しさ
暗い足元に転がる小さな錠剤は、あっという間に視界から消えた
はっきり言って、この状況で捜すのは不可能に近い
どうしよう
あれを飲まなければ、今の状態は酷くなるしかないのに
相葉さんの息遣いも、どんどん荒くなっている
相当我慢しているのが分かるけれど、俺は俺でやっぱり限界に近くて何も出来ない
タクシーの運転手は、さっきからミラー越しにこちらをチラチラと窺っている
そりゃそうだ
発情したαとΩが隣同士座って、お互い必死に自分を抑えているのだから
大抵なら、タクシーだろうが何だろうがとっくにΩは犯されているのが通常なのに、とでも思っているのだろう
だけど本当にギリギリなんてもんじゃない
車の揺れさえも、身体の奥から熱を呼び覚ましていく
恐らく俺が声を出してしまったら、相葉さんの理性はそこで崩れるだろう
だけど車を降りたら?
俺もまともに歩ける自身なんてない
間違いなく、その場に崩れ落ちる気がする
相葉さんも、多分これ以上の我慢は無理だろう