眠れない夜を抱いて
第5章 揺れる。
それを、ギリギリのラインで守ってくれた相葉さんは、むしろフェロモンレイプの被害者とも言えるんじゃないかとさえ思うのに
…Ωの俺に謝るなんて、信じられない
しかも俺の項を噛むまいと、自分の手の甲を噛み切っているなんて
「救急箱、ある?」
「え?」
「包帯。…やり直してあげるよ」
怠さを隠して、ゆっくりと身体を起こすとすぐに相葉さんが背中を支えてくれた
だけど
「見ない方が、いいと思うけど…」
相葉さんは苦笑したまま動こうとしなくて
「見ると、引くよ」
なんて言って再び俺をシーツに戻そうとする
「ダメ。傷は手当てしないと」
だって俺の為に負った傷だ
αの本能に打ち勝った、奇跡の傷とも言えるじゃないか
「でも……」
「いいから!」
もう一度起き上がり、相葉さんに向き直る
譲るもんかと、重なる視線を逸らさずに対峙する
「…分かった。お願いする」
“待ってて“ と相葉さんが苦笑交じりに言って立ち上がった
程なくして戻ったその手には、プラスチックの箱
それを座る俺の横にそっと置いた