眠れない夜を抱いて
第6章 限界はすぐに訪れる
最近、抑制剤の効きが悪くなっている
明らかな発情期に入ればアパートに籠って遣り過ごすようにはしてるけれど
どうにも相葉さんに会うとなると、おかしな衝動に襲われるようになってしまった
それが何なのかなんて、嫌と言う位分かっているから、会う前には必ず飲んでいる抑制剤
最初のうちは、1錠飲めば充分だったのが
何故か今は持たなくなってしまっている
副作用が強いのは耳が痛い程聞かされている
用量を守らないと大変な目に合うと言うのも、…大野さんを見て知った
あの時は、苦しむ大野さんを見て “何でそこまでして“ としか思わなかった
だけど
“それでも会いたいと言う気持ちが勝つ事がある“
大野さんの言葉が脳裏に甦る
ああ、これがその事なのかと今なら分かる気がする
怖いくせに会いたい
番になる勇気はないくせに、彼の傍にいたいなんて
自分ではどうしようもない矛盾に溜め息しか出ない
それでも
「病院、行かなきゃ…」
残り3つになった錠剤のシートを取り出して、1つを口の中に放り込んだ