テキストサイズ

ジッパー様

第20章 過去の記憶

 実の母は、私が十五の時に家を出て行った。理由は母の浮気だった。でも今思えば、母は私と父の関係に気づいていたのかもしれない。


「……ごめんなさい……」


 私はサヤに謝った。でもサヤは「絶対に許さない!」と私を睨み付けた。


 サヤが怒るのも当然だ。
 私は何度もサヤの恋人を奪ってしまっているのだから……。


「それよりも、サヤ。今夜はダンスパーティーでしょう? サヤに似合うドレスを何着か買ったから好きなものを選びなさい」

「本当に? 嬉しいわ、お母様!」


 母とサヤは楽しそうに廊下の奥に消えて行った。


「……」


 私はサヤが羨ましい。
 屋敷の外に出れて、自分のやりたいことをできて、自由に恋愛ができるのだから。


 ダンスパーティーだなんて、私は一度も行ったことがない。二十歳ならとっくに社交界デビューしてもいいはずなのに、父は許可しなかった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ