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ジッパー様

第20章 過去の記憶

 次の日、私は父に豪華なドレスを買ってもらった。


「まあ、シホ。とっても素敵よ」

「……ありがとう、お母様」

「シホは情熱的な赤が似合うわね」

「……」


 本当に似合っているんだろうか。
 それに胸元がかなり開いているような気がするけど、これが普通なの?


「あら? この赤いのは何かしら?」


 母は私の首筋を指差す。 
 私は等身大鏡に写る自分の姿を見て、カッと顔が熱くなった。


「虫に……刺されたみたいですっ……」

「あらまあ、もう春ですものね。リコ、シホの首にもお化粧をお願い」

「かしこまりました、奥様」


 母は気づいたのだろうか、この赤いのがキスマークだということを……。


「それにしても、やっとシホも社交界デビューできるなんて嬉しいわ。素敵な男性と出逢えるといいわね」

「……はい……」

「昨日はサヤもね、素敵な出逢いがあったらしいの。瞳が灰色の男性に一目惚れしたんですって」

「瞳が灰色……。外国の方ですか?」



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