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ジッパー様

第21章 ジッパー様との出逢い

「九条シホだって? あの娘が九条家の長女だったなんて……あの噂は本当だったんだな」

「まさかこんなところで本名を名乗ってしまうなんて、世間知らずなお嬢様なのね」

「赤いドレスで来るなんて、やる気満々じゃない」


 クスクスと笑い声が聞こえる。周りが私のことを口々に言い出して、私はその場から動けなくなってしまった。


「どうぞ」


 さっきの男性がスッと私の目の前に跪き、ハンカチを差し出してくれる。


「……えっ……」

「唇から血が出てます」

「あ……ありがとうございます……。でも汚れてしまうので受け取れません」

「構いません。このハンカチはあなたに差し上げます」

「……」


 私はジッと男性の顔を見た。
 よく見たら瞳の色が灰色で、日本人ではなさそうだった。


 もしかしてこの人……サヤが一目惚れしたっていう外国の……。



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