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ジッパー様

第23章 絶望

「ジッパー様、お気をつけて」

「ああ、夕方には戻る。マヤ、ギルバート、シホを頼むぞ」
 

 翌日、ジッパー様は椅子の材料を買いに街へと向かった。ジッパー様が擬態したジッパー・ヘンドリックという青年は椅子職人だった。なので椅子の知識も作り方も頭の中に入っている。


「お客様から注文が入ったそうだ。これでしばらくは食べていけるな」


 料理長のギルバートさんの言葉に、現実の厳しさを教わる。実はジッパー様の伯爵という肩書きは偽りだった。研究施設から逃げた三人は身分を偽りながら、なんとかここまで生きてきたそうだ。


「大丈夫ですよ! 敷地内には家庭菜園がありますし、いざとなったら山に行って猪を狩ればいいんですから!」

「え? マヤは狩りもできるの?」

「はいっ。あ、でも狩りはギルバートさんの方が上手ですけどね」


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