Hello
第40章 櫻井くんと俺ら②
「起きた?」
「…………ん」
口を尖らせたちょっと不機嫌なトーンに、小さく笑いをこらえた。
俺の前では……特にこういうときは、基本、素直な翔さん。
意地悪されて拗ねてます的な、不機嫌な顔がなんともいえない。
いつもの余裕ぶっこいた顔はどこへやら。
……そう。こんな子供のような翔さんがたまんないんだよね。
俺はゆっくり歩み寄って、さっきのようにベッドに座った。
俯せたまま、黒いシーツの上に気だるく横たわる翔さんは、俺を見上げて、
「……喉かわいた」
と、いった。
「いる?」
ペットボトルを見せれば、翔さんは、無言で頷く。
そっと体を反転させ、されるがままの翔さんの顎をつかんだ。
ボトルの中身を口に含んで、そのポッテリした赤い果実のような柔らかな唇をふさぎ、流し込む。
「…ん……ぅ」
「もっと?」
喉が動いたのを確認して、顔をあげ、おかわりを聞いてやるとコクコク頷いた。
そのまま何度か繰り返すと、翔さんは、満足したのか首を背け、手の甲で唇をぬぐった。
そして、ジロリとこちらを睨み、すこしかすれた声で、訴えてきた。
「……ってか……にの、おまえもうちょっと加減しろよ……」
俺、もう体動かねーよ……、とぼやく翔さんに、俺はクスクス笑った。
「なんで。求めたのはあなたでしょ」
「は。してねーわ」
「してるね。可愛かったよ?にの、もっと……って」
「ふざけんな……言ってねーし」
「記憶ソーシツにでもなった?」
「なってねーしっ」
「……じゃ、別人だったのかなぁ」
「……」
ふーん、と天井を見上げわざとらしく困った顔をしてみせたら、翔さんは、布団をガバリとかぶり、そっぽをむいた。
俺は、笑ってその背中を布団ごと抱き込む。
「怒んないでよ……気持ち良かったっしょ?」
「……忘れた」
子供みたい。
もう……可愛いなぁ。
だったら……。
俺はあたたかな布団の中にそっと手を差し込んだ。
俺の腰………あと一回もってくれよ?
「…………んじゃ、もう一回襲っとこうかな?」
「…っ…ざけんな!!…」
……fin....(笑)