Hello
第40章 櫻井くんと俺ら②
「…………そうなの?」
『そうなの!…………ったく。翔くんは、なんで俺じゃなくて、こんな鈍いリーダーを選んだかなぁ』
「……ごめん」
『嘘、嘘。……ったく、冗談くらいいわせてよ』
大きな声で笑いだした松潤の優しさが、身に染みた。
…………今日会える?
《10時まわるけどいい?》
…………いいよ
《わかった。待っててね》
LINEのトーク画面に浮かぶ四つの吹き出しをじっとじっと眺めた。
スーパーで、翔ちゃんの大好きな赤貝の握りの入ったお寿司を買ってきた。
部屋の掃除もした。
10時まであと30分。
手持無沙汰で、さっきからスマホを眺めてばかりの俺だ。
俺より断然忙しい翔ちゃんに気後れしちゃって、嫌われたくなくて、俺……必要以上に遠慮していたかもしれない。
テーブルに顎をおいて、じーっと考える。
本当は、相葉ちゃんたちみたいに、常に一緒にいたいけど。
でも、そこまで言えないし……。
「難しい顔してどうしたの」
柔らかな声に飛び上がって顔を上げたら、コートを手にした翔ちゃんがにこりと微笑んで立っていた。
「インターホン鳴らしたけど、出ないんだもん。合鍵使わせてもらったよ」
「え……そんなはず……」
言いかけて思い出す。
どうせこの家を訪れる人なんていないし、と、こないだのオフの時、インターホンの電源切ってたんだった。
そう伝えると、翔ちゃんは声をたてて笑った。
「信じられない。普通切る?」
「だって……」
「あ!寿司じゃん!すごい!用意してくれてたの?」
「うん……翔ちゃん好きでしょ?」
「好き好き。やった!腹ペコなんだ、俺」
嬉しそうに破顔する翔ちゃん。
子供のように、ガッツポーズする翔ちゃんは、可愛いな、と思う。
愛しいと思う気持ちが、さざ波のように押し寄せる。
思えば、恋人同士だというのに、長いこと触れてない。
俺は、立ち上がって、俺よりすこし高い位置にあるそのシャープな顔に両手をのばした。
翔ちゃんはちょっとビックリするように目を見開いた。
「翔ちゃん」
「……な、なに?」
「………おかえり」
すると、翔ちゃんは、ふわりと笑った。
「…………ただいま」
優しくて柔らかくて俺の一番好きな笑顔。