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Hello

第42章 from jealousy * バンビズ




次に目が覚めたのは、頭もとに置かれた目覚ましの電子音が鳴り出したタイミングだった。


ゆるく目を開けたら、カーテンのすきまから光がさしこみ、部屋を明るく照らし出してる。

朝だった。

柔らかな布団の中で、自分の置かれてる状況をぼんやり把握する。

俺のスケジュールを把握してる翔さんは、絶妙な時間に目覚ましを置いてくれていた。
きっと、あの人はもう仕事にでたのだろう。

翔さんのベッドに寝てるのは俺だけで、隣に誰かいた気配は最初からまったくなくて。


一抹の寂しさを感じながら、おそるおそる体をゆっくり起こした。


「痛ぇ……」


あちこちの関節が、ギシギシと音をたてる。
下半身も重くて怠くて。
あそこも熱をもってる気がする。


切れてたし、腫れてんじゃねぇかな……


ところが、あれだけ乱れてぐちゃぐちゃになっていたはずの体は、綺麗になっていて、きちんと翔さんのパジャマを着込んでいた。
痛いものの、中出しの後ろの処理も終わってる感覚だ。


結局、こういうとこなんだ…。
こういう優しいことをするから。

やっぱりあなたが好き、と、思っちゃう。


……じわりと涙がでる。


でも、それは間違いなのかな……。

たまらずに、そのまま両手で顔を覆い、嗚咽した。


もう一人の自分は、冷静に、そうじゃないだろうって言ってるんだ。

こんな暴力的なセックスなんか、俺は望んじゃいない。

俺がほしいのは、翔さんからの好きだ、という言葉で。
愛してる、という気持ちで。
優しいキスで。


嫌だというのに無理やり抱いたりするのって。
そんなの……愛じゃないだろう?

それに、もうひとつ俺には気になることがある。

翔さんは、絶対キスをしない。

以前に、ねだったら拒否されたから、それから怖くて、俺からもしてない。

恋人同士でそんなことある??


はぁ……と、ため息をついた。


俺だけが好きなのかな。
恋人だって思ってんのは俺だけで。
翔さんには、俺は……やっぱり邪魔なのかな。

いつから始まったか忘れた、この体の関係は、きっと翔さんにとっては、俺へのただの同情か、もしくは遊び。

恋人としての場所は……俺には最初からなかったのだろう。


翔さんの暗い瞳を思い出して、震えた。
俺は口元を覆って、また泣いた。


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