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Hello

第42章 from jealousy * バンビズ


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ライブにむけて、最終的にスタッフと話しておきたい件をいくつかすませた俺は、誰もいないリハーサル室で、休憩と称し、ぼんやりと座り込んでいた。

一人になったらろくなこと考えないのは分かってるけど。

普通の顔でい続けることもしんどい。

必要事項以外、誰も来るな、話しかけるなオーラを出し。
怠い体をソファにあずけ、ぼーっと空をみつめていたら、小さなノックの音とともに、ガチャリと扉があいた。


「あれ…?…松潤。おはよ」

「…………おはよ」


リーダーがひょこっと現れた。
ああ……そうか。
今日は振り付け考えるから、リハーサル室使うって、言ってたな。

じゃあ、俺はここにいちゃ邪魔かな、と立ちあがりかけたけど、心配そうな表情のリーダーに制された。
リーダーは、俺の顔をまじまじとみて、ぼそりと、


「……どしたの?」


と、言った。



「……え?」

「なんか疲れてるみたい」

「ああ……ちょっと寝不足で」

「ライブのことで?」

「……まあ、そんな感じ」

「ご苦労様」


リーダーは、微笑んで俺の隣に座った。

なんで隣?と、突っ込みそうになった。

他にたくさん椅子があるのに……ソファがいいのかよ?

と、思ってたら、後ろからまわしたリーダーの腕で後頭部を支えられた俺は、そのままコツンと頭をリーダーの肩に乗せられた。


「え……」


慌てて起き上がろうとしたら、リーダーは、優しく笑った。


「……ひでぇ顔。ちょっと寝なよ」

「……」

「色男が台無し」



瞼や頬が少し浮腫んでる自覚はあった。
夜も泣き通しだったし、朝から泣いたせいもあるだろう。
でも、そんな目立つようなこともないと思ったのに。


リーダーが隣で目を閉じた。
ほどなくして、すうすうと寝息がきこえてくる。


いや、あなた、何しにここへ来たんだ?って話だけど。

とまどいながらも。

リーダーの体温が心地よくて。
抱かれてる腕が温かくて。


また泣きそうになりながら、少しの休息を求めて、俺も目を閉じた。
眠ることはできないけど、心がゆるやかに安定してゆくのがわかった。


今だけ、何も考えたくなくて、俺はリーダーの温もりに体を寄せた。

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