
Hello
第42章 from jealousy * バンビズ
「おーい……そこの二人。仲がいいのはいいけれど。このままここに朝までいる気?」
よく知ってる声に、急激に現実に引き戻される。
ふわふわと揺蕩っていた夢と現実の狭間から、ぐいっと引っ張りあげられた感覚。
目をうすぼんやり開けたら、目の前に穏やかに微笑んでる翔さん。
俺は文字通り飛び上がって、リーダーの肩から慌てて頭を起こした。
「ん……翔ちゃん……おはよ」
リーダーが目をこすりながら、ふにゃりと笑うと、翔さんは、ガチ寝してたの?と、あきれ顔。
そんな二人のやりとりを見ながら、俺は、ドキドキがとまらずに、思わず胸に手をあてた。
よりによって、リーダーに寄り添って寝てるところを見られた。
死ぬ気でポーカーフェイスでいる俺に、翔さんは
「松潤も、寝不足?」
と、聞いた。
柔らかな声音に反して、その目は全く笑ってない。
底冷えする暗い光が、瞳の奥に見えた気がして、俺は心臓をぎゅうっと、わしづかみにされた思いがした。
……動悸がする。
「……多分」
「へぇ。自己管理にうるさいくせに?」
「うん…ごめん」
うつむくと、横からリーダーがふんわりとした空気で俺の擁護をしてくれた。
「松潤ひどい顔だったよ。死にそうな顔色してんだもん。だから、ちょっと休憩させてたの」
「…そうなんだ」
翔さんが、ふーん、とうなずいて、心配そうな顔で俺の顔をのぞきこんだ。
「昨晩何してたんだよ?また飲み歩いてたんじゃねーの?」
「……」
俺は、だまって首をふるふると振った。
あなたが俺を抱き潰したんだろ……!
言いたいけど、リーダーを始めとするメンバーにも俺らの関係はばらしてないから、言えなくて。
絞り出すように、
「ごめん……ちょっと風邪ひいたみたい」
と、嘘をつくしなかった。
翔さんは、気をつけろよ、と声をかけ、部屋を出ていった。
その声に、温かみも、労いも、全く感じないのは、俺の考えすぎなのか。
リーダーがあくびをしながら、「俺も振りつけ考えなきゃなぁ」と、頭をポリポリかいた。
「……ありがと。リーダー」
お礼を言ったら、リーダーは、ちら、と俺を見て、またふにゃりと笑った。
まるで、全部分かってるよ、知ってるよ、と言われているかのような顔から逃れるように、俺は目を伏せ、部屋を出た。
