Hello
第44章 可愛い人は *山
Sho
薬のCMの、智くんの女装を見たときの衝撃以来の快挙。
今まで、さりげなくお願いしても、似合わない、だとか、バレる、だとか、いろいろ理由をつけて、絶対になってくれなかったサトコ。
今回もダメ元で言ってみたのに、智くんが頷いたからこっちがビックリした!
地元の祭りってのが効いたのかな~。
俺らみたいな立場だと、ばれたらそのイベント自体にも迷惑がかかるから、なかなかこういうものに行こうか、とならないもの。
いきなり浴衣っていうハードルも、軽々飛び越え、予想以上の可愛らしさに仕上がったアラフォーの智くん……改めサトコちゃん。
もう俺はテンションあがりまくるのをおさえるのに必死。
青と白の古典柄の浴衣を着て、薄紫の帯をしめ、そそと歩く姿は、どこからどう見ても彼女じゃん。
グロスがキラキラしてる唇や、アップにしてる髪の毛からでる後れ毛や白いうなじ。
……可愛いったらありゃしない。
これは逆に人目をひくんじゃない……?なんて考えて。
……俺は、かぶったキャップのつばを深くした。
お祭りは、地元の商店街メインで行われてる。
バレたら、智くんを抱えて逃げようと、少しだけ思いながら、店を遠慮がちにのぞいて歩いてたけど、幸いにも俺たちに目をとめる人はいなくて。
加えて、太陽がおち、薄闇にまぎれはじめた雑踏はいい具合に俺たちの芸能人オーラも消した。
下駄のせいで、ひょこひょこと歩きにくそうな智くん。
俺は思いきって、智くんの手をとった。
「?!」
パッと智くんが俺を見上げる。
その表情には、咎める色と、とまどいの色と、少しの照れ。
俺は黙って微笑んで、智くんの指に自分の指を絡めた。