テキストサイズ

Hello

第44章 可愛い人は *山


Satoshi


俺たちの行動は、立場上人目を気にしないといけないことが大前提。

まして、メンバーでつきあってまーすなんて、公表できるわけもなく。
みんなすごく仲がいいんです、という雰囲気でとどめないといけない。

うっかり私情がメディアを通して、だだもれてしまうことを恐れるあまり、外では本心を表に出さない生活に慣れきった体は、突如握られた手を、反射的に振りほどこうとしてしまった。


温かい手のひらが、ぎゅっと、それを遮る。

ドキンと心臓が鳴ったけど、それに気づかない振りをして。


「……離して」


声を出したら男だってバレるから。
俺は、ひそひそした声で、翔くんを咎めた。


「なんで」

「だって……」

「俺ら恋人でしょう。みんなしてる普通のことだよ。違う?」



そういって、またぎゅっと手を握られる。


顔をあげたら、すっごい男前な顔で、頷かれた。
自信に満ちあふれた翔くんのその表情は、


大丈夫。ばれない。


そう……言われてるようで。



「…………」


俺は黙って、振りほどこうとする力をぬき、反対に、翔くんの指に絡められた自分の指に、きゅっと力をこめた。


翔くんは、ふっと笑って、ささやいた。


「外でこんなことするの初めてだね」

「……うん」

「……なんか嬉しいね」

「…うん」



そうだね。

俺は、恥ずかしいのもあって、翔くんの顔を見ないまま、コクリと頷いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ