テキストサイズ

Hello

第44章 可愛い人は *山


Sho



智くんが男だってバレたらいけない。
まして、俺らが嵐だってバレたらいけない。
ハンデだらけのこの状況。


智くんの腕をつかんだ俺は、できるだけキャップを深くかぶり低い声をだして凄んでみた。


驚いて振り返った智くんは、みるみるホッとした顔になり。
声も出せなかったんだな……怖かったろうな、と思った。


すると、チャラ男は、あっさりと手を離した。



「ちぇ、彼氏持ちか」

「あんた、まぎらわしいんだよ。喋らずに一人で座ってりゃ、誘い待ちかと思うじゃん」


吐き捨てるように言って、二人はそのまま他の女の子を物色しに歩いて行く。


言いたいことは山ほどあったけど、こっちも声をだして、周りに素性がバレたらやっかいだ。


悔しいが、黙ってそいつらを睨むだけにとどめた。

その思いが体に伝わったみたいで。


「翔くん……痛い」


智くんが、遠慮がちに俺の手に自分の手を重ねてきた。
知らず知らず、智くんの肘をつかむ手に力がこもっていたみたいだ。


「あ、……ごめん」


慌てて、手を離した。


智くんは、クスクス笑って、あー怖かった、と俺に抱きついてきて。
俺は、ふふっと笑って、そんな智くんをふわりと抱きとめた。



「ほんとなら、俺も怒ってるとこなんだけど……今、サトコだから、黙ってるしかなくてさ」


「そうだね……怖かったね。ごめん一人にして」


「うん。どーしよーかと思った……」



珍しくぎゅっと抱きついてくる智くん。
ふわりと彼の甘い匂いがする。

そんな彼が愛しくて、俺は、浴衣の上から少し汗ばんでる背中をそっと撫でた。


帯が邪魔で、抱きしめにくい。
髪の毛は綺麗にセットされてるから触れないし。
キスも……なんか口紅やらキラキラしたのがついてるからできないし……

サトコも、便利なんだか不便なんだかわかんないな。


黙って、智くんの気持ちが落ち着くまで抱きしめてると、智くんは俺の胸に頭を預けたまま、またふふっと笑った。


「王子様みたいだったよ、翔くん。カッコ良かった」


「……当たり前でしょ。あなたを守るのは俺だけだもん」


「そっか……そだね」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ