Hello
第44章 可愛い人は *山
Satoshi
どさくさまぎれに、翔くんにぎゅっと抱きついたら、そっと背中を撫でてくれて。
その手があったかくて、優しくて、胸がきゅうっとなった。
見上げたら、大好きな優しい瞳。
汗だらけの顔が、走ってきてくれたことを物語ってた。
額から、こめかみから、ぽとぽと汗がおちてきてる。
汗っかきだもんね。翔くん。
思わず浴衣の袖で、翔くんの顔を一拭きしたら、
「こらこら。そんなんで拭かない」
と笑って制されたけど、その顔が面白くて、うりゃ、と何回も拭いてやった。
じゃれている最中、ふと、翔くんの後方に転がったカップが見えた。
夜店でよくみるあれは。
「……翔くん、ひょっとしてかき氷買ってきてくれてたの?」
「……あ!忘れてた!」
翔くんが、焦ったように振り返る。
そっか。だから、俺の肘をつかんだ手が異様に冷たかったんだ(笑)
翔くんは、かき氷を買って戻ってくる最中に、俺が絡まれてることに気づいて、走ってきたものの、とりあえず邪魔だったから、芝の上にカップを置いたんだって。
イチゴとブルーハワイの二つだったらしいけど、イチゴのカップは横に倒れて、半分以上が芝に溶け込んでいた。
ブルーハワイはかろうじてバランスを保ってるけど、早くも溶けだしている。
「あーあ……もったいね」
翔くんが苦笑して芝からその二つを拾い上げた。
イチゴは、大半がこぼれてたけど、カップに残った部分なら、食べれそうだった。
「まだ食べれるよ。一緒に食べよう?」
二人で改めてベンチに座った。
俺は、持ってたブルーハワイのなかに、翔くんから受け取った残ったイチゴをざらっとうつし、スプーンでサクサクかきまぜた。
「……紫になったよ(笑)」
「赤たす青は、紫だからね」
「俺と翔くん足したら、松潤になるんだ」
「……そーゆーことじゃないけど」
クスクス笑いあう。
どーでもいい話が楽しくてしょうがない。
サクサクかきまぜた紫の氷を、はい、と翔くんの口元にもっていったら、翔くんは、ふふっと笑って小さく口をあけた。
俺もパクリ。
冷たくて、かいてた汗もひいてゆく。
「どーせなら、ぶどうの味がしたらいいのにね」
呟いたら、
「味までかわったらミラクルだよ」
翔くんのツボに入ったようで、あははっと笑われた。