Hello
第53章 可愛い人は ② * 山
「……どーゆーこと」
目の前には、濃紺の浴衣に身を包み、ウイッグをアップにしてキラキラの髪飾りをつけられた、極上の可愛さの……サトコちゃん。
……いや、もう、浴衣のチョイスといい、ヘアメイクの仕方といい、ドストライク。
去年に引き続いて、あいつのセンスは、間違いないぜ!と、美容師である旧知の友に、心のなかで称賛の拍手を送る。
一方、顔いっぱいに、怒っていますと、書いてあるサトコちゃん……いや、智くんは、突然見覚えのある美容室に押し込まれ、好き放題いじられて戻ってきたところで、すこぶる機嫌が悪い。
助手席で大股を開いて座り、腕組みをして頬を膨らましてる。
……いや、可愛いだけなんだけど?
俺は、ニヤニヤしそうな顔を叱咤し、智くんの膨れた頬を、ちょんとつついた。
「花火。見に行こうと思ってさ」
「……花火?」
智くんの綺麗な眉がひそめられる。
「去年見れなかっただろう?リベンジだよ。調べたら今日が祭りの日だったから」
「……あ」
智くんの険しい顔が、みるみる驚きの表情になる。
「今度こそ……一緒に見ようよ」
俺が微笑んで智くんの手を握ると、智くんは、ゆっくりと握り返して……こくっと頷いた。