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Hello

第53章 可愛い人は ② * 山


手をつないで歩いた。
コロンカランと、下駄をはいた智くんの歩調にあわせて、ゆっくり歩いた。

薄闇のなか、キャップをかぶった俺とサトコちゃんが、嵐のメンバーだなんて、お釈迦様でも思うまい、と、大胆にも恋人つなぎなんかしちゃって。

智くんは、それでも気になるのか、最初は手をほどこうとしたけど、俺が、大丈夫だから、と囁くと、うん……と頷いて、ギュッと手を握り返してきた。

その仕草がかわいくて、俺はニヤニヤがとまらない。


「……だらしねー顔」

「え?」


ぼそっと横から突っ込まれて、智くんをみると、彼は、おかしそうに微笑んでいた。

俺は、そう?と気を引きしめ、口を引き結ぶ。





露店をのぞきながら歩き、お目当てのヨーヨーつりの前で立ち止まった。


「ほんとにやんの?」


小さくつぶやく智くんに、やるよ、と宣言。

実は去年のリベンジは、花火だけでなく、これもなんだよね。俺的に。
秒で終わったヨーヨーつり。
今日は、絶対にgetして、智くんにあげたい。

俺は、張り切ってポケットの小銭をさぐって、二人ぶん、と早口で言い、店の人に渡した。

店のおっちゃんは、はいよ、と桶とこよりを俺たちそれぞれに渡してくれる。
見覚えのある小さなこよりは、なんだかこないだのよりも、頼りなくヨレヨレにみえるのは気のせいだろうか…


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