Hello
第58章 可愛い人は③ * 山
屋台の並ぶ通りに足を踏み入れた。
たくさんの人でごった返すこんな場所は、顔バレしたくない癖から、どうしてもうつむき加減になってしまう。
すると、そんな俺に気づいた智くんは俺の手をぎゅっと握った。
「大丈夫だよ。意外とみんな見てないよ」
「……」
「背筋のばして?」
「……でも」
「ショウコが、昔、俺にそう言ったんだよ」
小声で抗議したら、しれっと返された。
「…………」
いつもの可愛い智くんではない。
男前モードにスイッチ切り替わってんじゃん。
俺は、慣れない下駄をひきずりながら、裾を気にして必死で歩く。
すると、智くんは繋いでた手を離して、ん、と腕を出してきた。
「腕につかまりなよ。その方が歩きやすいかも」
「……ありがと……」
「足痛くなるだろうから、どこかで休もうね」
「……うん」
ヤバイ。
智くんがカッコいいぞ。
俺は、なんだかドキドキしながら、智くんの筋肉質な腕に手をかけた。