Hello
第58章 可愛い人は③ * 山
……あ
見覚えのある屋台が目の前に現れた。
色とりどりのヨーヨーが、大きな桶に所狭しと浮かんでる。
ヨーヨー釣りだ。
思わず智くんを見下ろしたら、智くんも同じことを思ったみたいで、長いキャップのつばの下でにやりと笑った。
しよっか?
そう言われた気がしたから、うん、と頷いた。
そのまま、スタスタと歩いていく智くんの腕につかまり、屋台に近寄っていく。
ラッキーなことにお客さんは誰もいない。
チャンスチャンス。
「おじさん。二人ちょうだい」
「はいよ」
智くんがポケットから小銭をだして、こよりと桶をうけとった。
「これ。彼女ね」
おじさんは、俺にも桶をくれた。
……彼女か
複雑な気持ちで、ありがとう、と頷き、足が開かないように気を付けなからしゃがんだ。
そーいや、なにやら長い爪をくっつけられたんだ。
こんなキラキラしたネイルで、うまく釣れるかな?
俺は、注意深くこよりを水につける。
狙うは水色のヨーヨー。
赤の水玉で、めちゃめちゃ可愛い。
是非これを智くんにプレゼントしたい!