
Hello
第58章 可愛い人は③ * 山
「ずるいなぁ。俺のときは、可愛いからひとつ持っていけなんて言ってくれなかったのに」
智くんが、ぶうぶういうから、笑ってしまった。
「ひとつ持ってけだなんて言うわけないじゃん。あなたいつも山ほど釣ってたでしょ」
「でもさぁ……」
「はい」
「…………?」
なおもぶうたれる智くんの気をひくように、俺は、もらったヨーヨーを智くんに差し出した。
「自分で釣ったわけじゃないのが悔しいけど。智くんにあげたかったから」
俺が、智くんに似合うと思ったやつだよ、と、言うと、智くんは、目を丸くして、それから照れくさそうに笑った。
「……俺も。これ翔くんが持ったら可愛いと思ったやつ。はい、あげる」
自分でつりあげた大量のヨーヨーの中から、ふたつ持って帰っていいといわれた智くんは、赤と青のヨーヨーを選んでいた。
やっぱり、なんだかんだで、メンバーカラー選んじゃうんだね。
「……ありがと」
小さく囁くと、智くんは満足そうに頷いた。
