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Hello

第58章 可愛い人は③ * 山


俺が足をひきずりながら歩いてるのに気づいた智くんは、心配そうに見上げてきた。


「……そろそろ痛いでしょ」

「うん……ちょっと」


普段履きなれない下駄は、鼻緒部分がこすれて足の指がジクジクする。
智くんが、ヒョコヒョコ変な歩き方してたのは、こんなに痛かったからなんだ。

我が身で感じて、ちょっと申し訳なく思った。


「あそこに座ろっか」


智くんは視線の先の広場を指差した。

三年目ともなると、さすがに休憩場所も心得たものだ。

人混みからはずれた広場。
そこに、ベンチが並ぶ。

二人で、迷うことなく奥まった場所のベンチに並んで座った。
少しでも暗いところを選んでしまうのは、芸能人の性か。


「楽しいね」

「そうだね……」


ヨーヨーをいじりながら、笑いあう。

去年までのことを思い出して……なんか、懐かしい。

智くんがナンパされたり、……そーいや、去年はここでやらしいことしちゃったっけな。
かわいかったなぁ、あのときの智くん。

艶やかに喘ぐ彼の表情が脳裏にうかぶ。

そんな俺の鼻の下がのびてたのか、智くんは、疑惑の眼差しになった。


「……変なこと思い出してない?」

「……思い出してません」

「ほんとに?」

「………」

「ショウコさん?」

「……まぁ、ほんの少し」

「もう!」


智くんは顔を赤らめて、俺を睨んだ。

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