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Hello

第58章 可愛い人は③ * 山


すごい……
やっぱり智くんはすごい。


俺がすっかり見いっていると、


「……こんなかんじ?」


ピタリと動きを止めて、キャップのつばをあげ智くんがふにゃっと笑った。

その動作に我にかえる。

パフォーマンスしてるときの真剣な顔と、この緩い笑顔。
このギャップに、ファンの子は、はまるというが、俺も例外じゃないと思い知らされた。


「うん……ありがと」

「やっぱ忘れてんなー……何年ぶりだろ」


キャップをはずして前髪を直しながら、智くんはふと俺を見て、苦笑いした。


「……なぁに、その顔」

「え……?」

「乙女みたいな顔してる(笑)」

「えっ……!」


俺は、思わず両手で頬を触る。

智くんは、そんな俺をみてクスクス笑った。


……乙女……そうかもしれない。
だって……


「だって……」

「ん?」

「だって。いま、俺は、あなたにもう一度恋した気分だもん……」

「(笑)……なんで」

「かっこよすぎるよ……」


俺の言葉に、智くんが恥ずかしそうに鼻をこすりながら近づいてきた。
下駄の音がカラカラと鳴る。


「なんだよ……翔くんこそいつものテイオー感どこいったんだよ」

「……え?」

「女の子の格好してるからかな。……すげー可愛いよ?」


言って、智くんは自然な流れで、俺の顎に指をかけ……そっとキスをした。


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