Hello
第58章 可愛い人は③ * 山
俺が受け手にまわった、いつもとテイストの違うキスに、どういうわけか俺の心臓は、キュンとなった。
リードされる経験というのは……なかなかないぞ。
あわせた唇のお互いの温かさを確かめあうように、軽く啄みあう。
そして、そのまま静かに唇を離した智くんは、困ったように笑う。
「やば……翔くん……あ、ちがった、ショウコ。マジ可愛い……」
……そうでしょう。
俺もそう思う。
俺は、悪のりして、小首をかしげてみせた。
「……抱きたい?」
「今ならいける」
「ふは……それはできません(笑)」
大真面目な智くんの言葉を、すかさず却下した。
だめだめ。
それはできない。
「たまにはいいかもよ」
「だあめ」
「……なんか興奮してきた(笑)」
「だめだよ(笑)」
「ショウコ〰️」
「外だっつの」
がばっと抱きついてきた汗ばんでる智くんの背中を、ポンポンと叩く。
「翔くん……いい匂いがする……」
「……整髪料の香料だろうね」
「翔くん……」
「ん?」
「好きだよ」
「…………俺も。あなたがすき」
小さく呟いたらギュッと抱き締められた。
はたからみたら、愛をささやく恋人同士。
外でこんなこと、なかなかできないから。
俺たちは薄闇にまぎれていつまでも抱き合っていた。