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Hello

第63章 可愛い人は④*山


Sho



お前の浴衣も用意してるからな、と言われて、なんて気が利くダチなんだ!と、感謝した俺が馬鹿だった。

智くんのメイクをお願いしてるんだったら、今年の女物着るのは智くんってわかるだろ。

それなら、俺の浴衣も用意っていわれたら、それは男物だなって、思うよな。普通。

なのに、差し出されたのは、朱色と黒の、まぁモダンな今風の浴衣。


「は?ちげーよ、これ」

「え?でもこれしかないぜ?」

「いや、じゃあ俺は着ない」

「ばーか、ここまで全部用意したんだぞ。着ろ」

「やだよ、何で…!」


そこまで押し問答したところで、隣の部屋から、ヤダヤダと拒否してる智くんの声が聞こえた。

俺はそこで分かった。
分かってしまった。


いやに智くんがご機嫌だったわけを。
いやにスムーズに美容室に入ったわけを。


俺ら……同じこと思ってたわけだ。



仕度を終えて、智くんと対面する。

そこには、紺色に水色の朝顔の花を散らしたお洒落な浴衣をきて。茶色のゆるふわなウエーブのウイッグを花で綺麗にまとめた清楚な………サトコが困ったように笑ってた。


「綺麗だね……ショウコ」


そういわれて、


「あなたも。サトコ」


俺は返した。

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