
Hello
第63章 可愛い人は④*山
Sho
過去の成功例が、俺らを大胆にさせる。
結局、中途半端な変装ってバレるけどさ。
思い切った仮装さながらの変装なら、意外とわかんないんだよ。
しかも夜ときた。
うつむき加減に歩いたら絶対バレないという、俺らには妙な自信があったんだ。
「行くよ」
「うん」
俺たちは、ヒソヒソと声をかわしながら、屋台の通りへ足を踏み入れた。
念の為、持った団扇で仰ぐふりして、さりげなく顔をかくす。
通りのど真ん中の方が、両端の屋台の光の影響をうけづらく、むしろ少し薄暗いのも、ここ数年で学んだ知恵だ。
カランカランと下駄を鳴らしながら、ゆっくり歩く。
隣を歩く智くんも、うつむきながら、時折俺を見上げて悪戯っぽく笑う。
「手つなぐ?」
俺は、智くんに手を差し出した。
「……女同士で変じゃない?」
「今の子たちってそんな感じだよ」
「ほんと?」
じゃぁ……、と、智くんのポカポカした手が遠慮がちに、俺の手に触れる。
指を絡ませようとして、咄嗟に握り直した。
…さすがに恋人繋ぎはないよな
俺たちは寄り添って、猫が人混みをすり抜けるように、それでいて、のんびりと歩いた。
