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Hello

第63章 可愛い人は④*山


Sato


「あ……」


思わず声がでて、慌てて飲み込んだ。
翔くんが、なに?という視線で俺を見るから、視線で促すと、翔くんは、眉を下げて笑った。


「……今日は2人とも声がだせないからできないね」

「残念。翔くんがどれだけ成長したか見たかった」

「あなた失礼ね」


ヒソヒソと会話をかわし、ふふふっと笑う。

毎年寄っていたヨーヨー釣りの屋台が目の前にある。
去年とは違う兄ちゃんが座って、店番をしてる。
やりたいけど……翔くんみたいな、男の声の美女が来たら、悪目立ちしちゃいそうだ。


「今年はみるだけにしようね」

「うん」


頷いて、手を繋いだまま店の前を通過した。


ん?来年は、やるってこと?
どうやってくるの?
2人でくるの?
女装はどっちがするの?


なんだか疑問だけど……まぁいっか、と、俺は翔くんを見上げた。
すると、翔くんは、とある屋台に目をとめていた。


「お腹すかない?智くん」

「……すいたっちゃすいたけど」

「あれ、食べよっか」


ジュージューと美味しい匂いをふりまいてる、たこ焼きを目指して翔くんは歩き出した。


「バレない?」

「無言でも、ひとつちょうだいって人差し指立てたらわかるよ」

「そ…そう?」


翔くんは自信満々に、屋台に近づいていった。


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