Hello
第63章 可愛い人は④*山
Sato
めんどくさいことになった、と思った。
初めて、翔くんと花火大会に来た時も、こんな風にナンパされたけど、あのときは、翔くんが彼氏だと宣言して凄んでくれたから、よかったけど。
今日なんて2人とも女じゃん。
声出したらさすがに男だってばれるでしょ。
しかもゲーノージンってことまでばれたら、めちゃめちゃまずい。
どうするの?
俺は、翔くんを見上げる。
翔くんは、思い切り冷たい目で奴らを睨んでる。
美女がそんな顔したら、めちゃくちゃ怖いんだけど。
奴らは翔くんに手を伸ばしかけて、あえなく振り払われた。
奴らは払われた手をさすり、ますますいやらしい目になった。
「いいねぇ、その目。気に入った」
変態がいる!
マゾがいる!
俺は、ドン引きで立ちすくむ。
翔くんが少し俺に近づいた。
俺らはぴったりと寄り添った。
……なんとなく翔くんの考えてることがわかった。
俺は、下駄の鼻緒にかかる足の指に力をこめ、いつでも動ける体勢をとった。