テキストサイズ

Hello

第63章 可愛い人は④*山


「なぁ。カラオケでも行こうぜ」


そいつらが、もう1回言って、今度は俺の手をとろうとしたから、俺は、すっと身をひく。
同時に、翔くんの手が鋭くそいつらの腕を打った。


「………この人に触んな」


わ!喋った!


びっくりして俺は翔くんを見上げる。
だけど小さな声だから、まだ男だとはバレてなさそう。


そいつらは、ニヤニヤして俺たちを見てる。
翔くんは、大きな瞳でじっと奴らをにらみつけてる。

その冷静な頭で、このあとの段取りを考えてるんだろうな。
………多分、俺もそうする。


つまり。


「うわっ」

「てめーらっ!」


翔くんは、もってた、熱々のたこ焼きを力いっぱいそいつらに投げつけた。
と、同時に、俺の手をぐんっと引っ張って。


「走るよ!」


小声で怒鳴って、人混みに向かって2人で駆け出した。


こーゆーときは、逃げるが勝ちなんだ。



下駄で逃げ切るのは無理だから、あえて群衆に飛び込む。
リスクはあるけれど、やつらに手ごめにされるよりマシだった。

早足でめちゃくちゃに人並みをぬい、建物の陰まで来て、2人が追ってこないと確認して、ようやく立ち止まった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ