Hello
第35章 大野さんと僕ら
×Nino
「ほんと、あんたまた一段と黒くなったね……」
コトにおよんだあとである。
疲れはててぐったりした体を横たえていたら、目の前に座り、うまそうに水を飲む男の黒さに思わず声をかけた。
ほどよく筋肉のついた綺麗な背中は、いい色に焦げていて。
絡んでいるときは、この人の黒さなんか気にもならなかったけど……。
こうやって改めて眺めるとね。
数週間前に体を重ねたときは、もう少しましだった気がする。
背中まで真っ黒じゃん。
「……こないだの海、めっちゃいい天気だったからなぁ」
船の上で裸になったっての?
あきれてると、ペットボトルをチャプンといわせて、智は悪びれもせず、にやりとした。
……まぁいーけどさぁ……
「またJに怒られんじゃん。白い衣装が似合わないって」
「……おりゃ、黒を着るからいいんだ」
「そーいうわけにもいかないでしょーよ……」
「つーか、何を着ても似合うだろ?」
「何、圧かけてんの」
くすくす笑ってまぜかえしたら、智は俺にペットボトルを見せた。
「いるか?」
「……うん」
智は当たり前のように、ペットボトルをあおった。
そうして、俺に覆い被さってくるから、俺は、意識して顎をあげた。
智は、その綺麗な唇を俺に重ね、含んだ水を口移ししてくる。
ちょっとぬるい水は、とても甘くて。
かれた喉に心地よい。
「……おいし、もちょっとちょーだい」
「ん」
智は、親鳥のように何度かそれを繰り返して、ボトルの中身がなくなるまで飲ませてくれて。
最後に、チュッと音をたて唇を離した。
そのままじっと俺を見下ろすから、なに?と問いかければ、智は苦笑して、俺の頬に手をあてた。
「……なんか、おまえは、ますます白いな」
「いやいや……ますますっておかしいでしょ」
うふふっと笑う。
「俺は普通。あんたが黒いから際立っちゃうのよ」
「そーか?」
「そうだよ」
「んじゃ、今度はかずも一緒に海に行こう」
名案だ!とばかりに声を弾ませるから、思い切り冷たい眼差しを送る。
「あんた本気でいってる?」
「……んにゃ、冗談」
智は、笑って俺を抱き込んだ。