
僕のまーくん。
第37章 かずくんがヤバい!?
弾いてる綾野くんは、僕の気配にはまだ全然
気付いてない。
なんか……普段の暗い感じの綾野くんの姿じゃなくて、なんていうか、うーん。
全てを解放して、本当に気持ちよさそうに
弾いてる感じ?
身体を右に左にユラユラ揺らしながら、長い指が
鍵盤を自由にたどってる。
それに、こんなにも人を惹き付ける音色を
奏でるんだ……
音楽のいろはも分からない素人の僕にも
綾野くんのピアノの凄さは伝わってくる。
なんて、思いながら最後まで聞いていた僕。
……ポローン♪
と最後の音を聞き終わった後、僕は思わずパチパチと大きな拍手を送った。
途端に、バッっとこちらを見た彼の顔は
今までに見たことがないような、驚いた
顔をしていた。
「なっ……なんで」
僕と目が思いっきり合って、綾野くんの顔がみるみるうちに赤くなっていくのが、ここからの
距離でもよく分かった。
長い前髪の隙間から、見え隠れしている
切れ長の目がキョロキョロ泳いでるのが
見えて
N「あっ!驚かせてゴメン、でも凄いんだね。綾野くん!」
僕は、今聞き入っていたピアノの音色の感想を
素直に綾野くんにぶつけた。
「あっ……いつから?」
綾野くんが、ちょっとモゴモゴと小さな声で
言った。
N「途中から!ゴメンね。音色にツラれちゃって……」
綾野くんのほうに、歩いて行く僕。
そんな、僕をただ棒立ちになって見ている
綾野くん。
N「本当にごめんね?でも、凄い綺麗な
曲だった……」
背の高い綾野くんを、少し見上げながら
僕はにっこり笑って伝えた。
気がつけば、僕のさっきまでのドキドキしていた
感情は静まっていたんだ。
あの綺麗な曲のおかげで……
