
僕のまーくん。
第38章 綾野くん
言ってしまった事はなかった事には
出来ない。
だって、目の前にいる二宮くんは目を丸く
しながら俺を見ているし……
あぁぁ……もう、もうどうしよう。
指が勝手にピアノの鍵盤をたたいている。
ポローン、ポローン♪って
もう!
もうぉ、分かんないよ!
何がなんだかぁぁ
綾「知りませんよ」
って、また俺の意思とは違う所で勝手に
口をついて出てきた。
N「知らないって……どういう事?
ねぇ……」
驚いた顔に、更に険しさまで
二宮くんにプラスされてしまった。
だって、眉間にシワが寄っちゃってるし……
可愛い顔がさ。
みるみるうちに、強張っていく。
N「ねぇ、聞いてる?」
俺が黙りこんでしまって、
まだピアノの音を音楽室に意味もなく
響かせてるせいか、意味が分からない
事を言ったせいか、二宮くんから苛つきを
感じる。
あぁぁ……もう、聞いてますよぉ!
思わず立ち上がった俺は、二宮くんの近くまで
ズイッと身体を寄せた。
N「な、なにっ?」
ビックリした様子の二宮くんを上から
見下ろす。
……そう言えばさっき二宮くんは俺に
「僕の事登下校の時つけたりしてない?」
って、確かそう聞いてきたっけ。
……僕の事。
じゃない。
俺は……俺は、
綾「俺、あなたの事はつけてませんよ?」
思わず、そう言って二宮くんを見た。
