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好きにしていいよ

第3章 なんで俺なの?





脱衣所まで運んでくれた黒谷さんは、ゆっくりと俺を床の上に降ろしてくれた。

俺を軽々と持ちあげてくれた逞しい腕。

この腕に抱かれたんだと思うと、胸が締めつけられるようにキュンと鳴る。




『可愛いな…』

『へっ?』

『どこもかしこも可愛くて、食らいつきたくなるよ』

『ちょっ…どこ見て言ってるんですかっ!!』




黒谷さんの視線は、バッチリと俺の股間へと注がれていて。

ねっとりとした視線が恥ずかしくて、咄嗟に恥ずかしい部分を手で覆っていた。




『あれだけ俺の前でアンアン喘いで腰振ってたくせに、今更恥ずかしがることかよ』



頭の上ではクスクスと冷ややかな笑い声。

一瞬にして思考が固まる。


これまで見せてきた優しくて紳士的だった彼の面影なんて、どこにもなかった。




…てか、あんた誰?




『とんでもない淫乱で驚いたよ。顔にセックスが好きですて書いてある』

『ちがっ…!!』

『じゃあなんで、この世界に飛び込んできたんだよ』

『あんたには関係ない…』




すぐに頭に浮かんだのは、高校時代に俺を振った先輩の顔。

それだけで、
バカみたいに泣きたくなる。




『慰めてやろうか?』

『へっ?』

『何すっとんきょんな顔してんだよ。今にも泣きそうにしてから、慰めてやろうかて言ってんの』




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