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好きにしていいよ

第1章 初顔合わせ





「遅れてすみませんっ!!」




死に物狂いで走ったせいか、着いた時にはもうびっしょりと汗で濡れていた。

怒られる覚悟でドアを開けると、あまりの和やかなムードに拍子抜け。その中心には黒谷さんがいる。

…とりあえず怒られなくて良かった。




「おはよー悠くん。事故にでもあったかと思って、心配しちゃたよお」



男性スタッフの一人が、優しく声をかけてくれる。

喋り方がオカマ口調なのが特徴だ。




「いえ、昨日遅くまで黒谷さんのビデオ見てて、寝坊しちゃて…ダメですよねこんなの…」

「いいじゃない!勉強熱心で。黒谷さんも喜ぶわ~」

「えっ…!?」

「知らなかったの?随分と悠くんのことが好きみたいで、遅刻した悠くんを一生懸命庇ってたのよ」




背中に強い視線を感じて、振り向くとそこには黒谷敦史がいた。

そういえば、挨拶もしてなかった!

嘘…

こっちに近づいてくる………




「悠くんだよね…」

「は、はいっ!今日はすみませんでした!俺のせいで撮影遅れてしまって…」

「別に気にしなくていいからね。僕なんてしょっちゅう遅刻してるよ」




大人だな黒谷さんて、それに凄く余裕な感じがするな…




「それより汗かいてるね、シャワー浴びてくるといいよ」

「そんなっ…悪いですからッ!!」

「大丈夫。監督には僕から言っておくから…」

「そういう問題じゃなくて…これ以上皆さんに迷惑かけられないというか…黒谷さんのご好意は嬉しいんですけど…」

「そっか…良い子だね。…益々君から目が離せなくなるな…」

「どういう意味ですかあ?」




クスリと笑うと、俺の頭を黒谷さんがくしゃりと撫でる。

思いのほか、その大きな手が気持ち良かった。




「今日は宜しくね。期待してるから」

「はっ、はい!!」




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