君はぼくの全て
第1章 1時間目
ダンッ、ダンッと直に座る床に響くドリブルの振動に身を任せる
まーくんの鞄を胸に抱き締め…は大きすぎて出来ないから膝に乗せて、コートを走るまーくんをひたすらに目で追った
「相葉!!」
「はいっ」
先輩からのパスを華麗に受け損ねたまーくんが、ボールを追って走る
「しっかり取れって!」
「すいません!」
コロコロと転がるボールを拾い、ちらりと俺を見て苦笑する
“頑張れ“ と口パクで伝え、まーくんがそれに頷いた
こう言う秘密っぽいやりとりが嬉しくてやめられない
ほら、何かさ…二人だけの合図って言うの?
誰にも知られずにこっそり楽しむみたいな
「いや、皆分かってるし」
「つーん」
「感じ悪っ」
もうさ、いちいち智が絡むの止めてくれないかな
俺はまーくんだけを見ていたいんだけど
「大野!ミニゲすっぞ」
「あ、はーい!」
「早く行け」
「分かってます」
先輩に呼ばれ、智が急いでコートに戻る
…智は、1年生唯一のレギュラーだ
俺と大して変わらない小さい身体のくせに、それを存分に生かしている