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千年の花嫁

第10章 不器用な愛情

・藤ヶ谷side

嫁合わせの儀式もなんとか終わり、その日の夜。



北「‥‥‥」

藤「どうした?元気がないじゃん」



そこには、珍しく沈んだ顔の宏光がいた。



北「太輔…」

藤「んっ?」

北「俺なんも分かってなかったんだな」

藤「何かあった?」

北「五関は、ずっと独りで孤独と戦っていたのに」

藤「会えた嬉しさで有頂天になってしまい?」

北「うん、まぁ」

藤「そう自分を責めるなって」

北「だけどさ」



ふっ―



藤「来いよ、こっちへ」

北「ブンブン」

藤「ほら宏光、ニコッ」

北「くっ、太輔」



呼ぶと、ギュッと抱きついて来て。



藤「あいつはきっと自分と同じに、お前らが俺らの事で苦しみ辛い思いをしているんじゃないか、そう思っていたんだろ」

北「でも実際は」

藤「とうに乗り越えてしまっていた、が自分はそれが出来てない途端に疎外感を感じ心の拠り所が無くなってしまったような気がし」



でもな、それはお前のせいでもなければニカやトッツーのせいでもない。

もちろん郁人のせいでも、あいつ自身の問題なんだ。



藤「だいじょうぶ五関は、そんな弱い奴じゃない自分で見つけるさ心の拠り所を俺はそう信じているんだ」

北「太輔」



チュッ!



北「んっ、もっと深く」

藤「チュプ、クチュクチュ」

北「はふっ…ん‥ぁ…」



いや信じていたいんだよ。



北「あっ、んっ、もっと、激しく」



縋るように俺を求めて来る宏光。



北「ああっ、あっ、太輔」



お前も不安なの?



北「んああっ、いっ、あっ、はっ」



同じように他の連中も。



横「五関がそんなことを」

ニ「あいつの気持ち俺には痛いほど分かる、クッ」

横「ニカ」

ニ「なぁどうしたらいい俺たち見ている事しか出来ないのかよ」



ギュッ!



横「太輔が五関の心に蒔いた一粒の種、それが上手く実になってくれたらいいんだけど」

ニ「あの孤児たちのことを言っているの?確かあそこって」

横「あいつが長になってから作った場所さ」

ニ「郁人もそこにいたんだよな」

横「親をなくし最初、郁人は独りで生きていた」

ニ「どうやって?」

横「木の実を拾い生ゴミを漁りながら」

ニ「‥‥っ」




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