テキストサイズ

千年の花嫁

第1章 はじめに

ところ変わって現代、都会のとある病院で元気な男の子が産声をあげていた。



「おめでとうございます」

「なんて可愛い子なんでしょ」

「まるで女の子みたい」



この夫婦、夫の方が稲荷村の出。

しかし都会に出て来て、そのまま知り合った女性と結婚をし子を成したというわけです。

ときは流れ若者たちは皆、村を出て行ってしまい今や年老いた人達だけが暮らしている稲荷村。

それでも、時々やって来る少年が消えることはあったそうです。



「あそこにだけは」

「絶対、この子を連れては行くまい」



2人の間で誓った約束━

けれどその後、夫は他界し皮肉にも再婚相手の転勤によって親子はそこへ足を踏み入れる事となってしまいます。

~過疎化した村を救おう

名目は体裁がいいけれど、実際は狐への嫁入りという伝説が残る稲荷村を観光地化し金儲けをしようという勤めていた会社側の企みによるものでもありました。



「あそこにだけは行きたくない」



妻は必死で夫に訴え続けます、しかし。



「成功すれば昇進ができ今よりもっといい暮らしができるようになる子供たちにとってもいい事だろ」



結局は逆らう事が出来ず。



「ここが私達の新しい家だ、そして周りには一緒に来た同僚たちの家もある、なぁーに家族ぐるみで近所つき合いし助け合って行けば大丈夫すぐ慣れるさ」



そこは村に移住して来た者達専用住宅がある場所、その裏にはあの稲荷神社の鳥居も見えていました。



「あれが噂の…」



妻の心に過ぎる不安―

それは息子が12歳、中学に上がった頃のこと。

そして5年後、伝説は現実となって彼らとその同僚の子達4人の身に降りかかって来る事となります。

そう妖狐は確かに存在していたのです稲荷神社の奥、裏稲荷に。

今か今かと、その時を待っていたかのように息を潜めながら。





配役設定へ↓

ストーリーメニュー

TOPTOPへ