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千年の花嫁

第3章 妖狐の一族

藤「お前もこれからは独りじゃないんだ無茶なことはするんじゃない分かった」

橋「ごっ、ごめん」

藤「ったく妖狼と喧嘩するだなんて、わたでも相手にしないのにお前ときたら」

橋「だって、あれは」

藤「男は言い訳をするな」

橋「すみませんでした」



こいつカッコいい。



藤「トッツー、ニコッ」

戸「…はい」

藤「やんちゃな奴で大変かもしれないけど、よろしく頼む」

戸「えっとぉ」

藤「藤ヶ谷太輔だ、ニコッ」

橋「俺達の長、金の天狐」

戸「てっ、天狐おぉーっ」

藤「随分と仲良くなってしまったみたいだが、これなら心配いらないか」

戸「‥‥っ」

藤「ふっ、可愛いやつ見つけて来やがって ニコッ」



ドキン!



戸「あ、その」

藤「困ったことがあったら何でも相談に乗るし俺の部屋へいつでも来い」

戸「ありが…と」

藤「じゃ明日なハッシー、今夜はたっぶりと寝とけ」

橋「はーい、んふふっ」

藤「みや、ドシを踏んだらお仕置きだからな」

宮「うえっーっ、こわっ」

藤「あはははっ」



これが、初めて俺と藤ヶ谷が出会った日のことだった。

それからは何かと力になってくれるようになり、いつしか俺達は友達として親しくなっていく事になる。

それにしても…



橋「トッツー寝よ、ニコッ」

戸「うん」



婚儀ってなんなんだろう?



戸「ハッシーそんなにひっつくなって、クスッ」

橋「だって大好きなんだもん、んふふっ」

戸「しょうがないなぁ」



この2人が、こんなだったせいだろうか俺はすっかり狐への嫁入り伝説のことを忘れていて。



戸「おやすみ俺の可愛い狐くん、ニコッ」

橋「スースースー」



そのときを迎えるまでは。

そして、引き込まれて行った先で待っていたのは言いしれぬ不安と慟哭。

でも、やがて俺達は知る事となる彼らの心の中に悲しいまでの傷があることを。

寄り添えば、みな同じ共に生きるパートナーが欲しい人間だって妖狐だって愛されたいし愛したいと願っている。

だったら俺は愛することを選ぶよ、この幼気な愛に飢えたやんちゃ狐を。

そう決心したのは、悲痛な声を上げ泣くハッシーを見たときだった。

自分を産んだ母親を恋慕い瞳に涙を溢れさせ。




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