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千年の花嫁

第6章 希望の花嫁①

戸「藤ヶ谷あぁーっ」

藤「そんな声を出すなってトッツーちゃちゃっと産んじゃいな」

戸「人ごとだと思って」

藤「お前なら大丈夫」

戸「なにかと言えばそれだし、ハァ」

藤「それは俺がお前を信じているからだよ」



ふっ、言うの上手いな。



藤「それより五関のことなんだけど」

戸「‥‥っ」



が、この頃すっかり女になってしまっていた五関は自暴自棄な態度をとるようになり。

河合が、どうしていいか分からず頭を痛めていたらしい。



藤「ってことで、そうする事に決めたから」

戸「えっ、でも」

藤「でないと、あいつおかしくなってしまう」

戸「俺達に会ったからといって五関の河合に対しての態度が変わるとは思えないけどね」

藤「それでもダチがいるのといないのとでは心の持ちようが違う」



確かに、自分もそうだったから。

あれ以来、何かと気に掛けて来てくれるようになった藤ヶ谷は。

頻繁に、俺達のところへ顔を出してくれるようになり。



藤「支えてやってくれ五関を、ニコッ」



その存在が、どれだけ心を救ってくれたか知れない。

感謝している…



戸「分かった、ニコッ」

藤「頼むな、フッ」



しかし、本当は全員が完全に女体化しないと顔合わせできないのが本来一族の習わしだとか。

でも、それでは五関の精神状態が持たないかもしれない。

そう危惧しての、藤ヶ谷の長としての独断だった。

そして後日、嫁合わせの儀式は行われる事となる。

が、そこで初めて俺は。

いや五関も、北山がここへ来ていた事を知ったんだ。

妖狐の長、藤ヶ谷の妻として。




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