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BLUE MOON

第8章 過ち


雅はシーツを手繰り寄せると今まで見せていた肌を隠した。

そして胡座をかく俺と向き合う形で座り直すと

「2ヶ月…2ヶ月でいいから保留って形にしてくれない?」

頭を下げながらそう言った。

「2ヶ月も?どうして?」

こんなこと早く決着をつけた方がいいに決まってる。それなのに2ヶ月も保留って

「私からパパとママを説得するから…」

「説得?」

「迷惑かけたお詫びっていうか…涼くんは今の地位も名誉も捨てちゃいけないと思うの。だから、私の我が儘で破談にして欲しいって言いたいの」

どういう風の吹き回しだろう。

今さっきまで俺と結婚しろと迫っていたのに、無理だと現実を突きつけたらアッサリと身を引くなんて

「信じてもらえない…よね」

雅は上目遣いで俺を見上げながら申し訳なさそうに笑う

「別にね、2ヶ月間付き合った振りをしてくれって言ってるわけじゃないの。ただ急に『飽きたから』って言うより少し時間がたってからの方が信憑性が出るって思うの」

小さい頃からそうだ。雅は年上の俺たちを説得する時いつも身振り手振りを加えながら必死に言葉を紡ぐ。

「…ダメ?」

そして最後にはお願いとばかりに顔の前で手を合わせる。

「そのシナリオだと雅一人が背負うことになるんだぞ?」

「いいの。私がいけないんだから」

「でも…」

「お願い!そうしないと私もう二度と涼くんと顔合わせられないから」

手を合わせ目をギュッと瞑り頭を下げる雅。

幼い頃の雅はよく『一生のお願い!』何て言って人生を安売りしてたことを思い出した。

「わかったよ、ありがとう雅」

「ホントに?」

雅は頑固だから俺らが引かなきゃ纏まらないんだよな。

「痛いって!」

「涼くんありがとう!」

さっきまでの深刻な俺たちを一瞬で忘れてしまうかのような高い声が室内に響く。

「雅、酒の上とはいえ本当に申し訳なかった」

勢い余って抱き付いてきた雅を離して今度は俺が頭を下げる。

「雅がそこまで腹を括ってくれたなら俺も出来ることはするからちゃんと言えよ」

「わかった。その時はちゃんと相談するね」

雅の屈託のない笑顔を見て思う。

「ねぇ、今度彼女を紹介してよ。お兄ちゃんも会いたがってたよ」

もし桃子に出会う前に雅との縁談が持ち上がったら

「雅がイジメないならな」

「酷い!」

まぁ…タラレバだけどな

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