BLUE MOON
第9章 責任
「わかった…病院に行ったら教えて」
繁華街の中心にある誠が選んでくれた店の前で俺は行き交う人たちの真ん中にいた。
…マジか
雅が言うには来る筈のものが10日ほど遅れていて
…たった一回でかよ
その頃関係をもったのは俺だけだと言う。
頭を殴らたみたいにガンガン痛くて本能を吐き出した爽快感もなく目覚めた朝、雅は真っ裸で俺の胸に抱きつくように眠っていた。
だが、俺にその時の記憶はない。
でもあの状況下で何もなかったなんて言えるわけない。
それなのに雅は俺を許してくれた。見合いの話しも無かったことにしてくれるっておまけ付きで。
条件付きだったけど俺の社会的地位を守ってくれるためっていう心遣いが有り難いかったのは確かで
…何やってんだオレ
神様は酔い潰れてたとはいえ女に手を出した俺を許してはくれなかったようだ。
遅れているだけで確証は得ていないと言う雅に病院に行くように伝えた。
「悪いな」
個室に戻り席につく。
「仕事?」
「あぁ」
「お疲れ様です」
ペコリと頭を下げなげる桃色に頬を染めたモモの顔をまともに見ることが出来ない。
「それでさ 涼に勝てるかと思うじゃん」
「うんうん」
「でも勝てないんだよねぇ」
どうして今日誠に会わせてしまったんだろう。
「誠、おまえ余計なこと言うなよ」
「余計なことじゃないですよ。私の知らない涼さんを教えてもらってるんです」
「ねぇ~桃子ちゃん」
「それが余計だっつうの」
もしもモモから同じ話を聞いたら俺はどうするだろう。
考えなくても答えは簡単だな。
痛がるほど強く抱きしめてありがとうと何度も感謝の気持ちを伝えて
そしてモモとお腹の子をどんなことがあっても幸せにするって無条件で誓える。
「涼さんのその肩幅は水泳選手だったからなんですね」
「知らなかった?」
「国体に出るほどだとは知りませんでした」
余計な昔話を聞いて目を細めて微笑むキミを俺の親友は満足げに微笑む。
「涼」
「ん?」
「桃子ちゃんと仲良くな」
認めてやるよ、なんて偉そうに態度で示しながら
「あぁ」
もし雅の腹に新しい命が宿ってたとしたら…
「不甲斐ない返事だな。そういう時はデカい声で返事しろよ」
「ハイハイ」
自らの意思で手放さなきゃいけないかもだなんて
俺は本当に大バカ者だ。