BLUE MOON
第9章 責任
「ただいま…」
ひとりで家に居ても余計なことばかり考えてしまうので麻里と白石くんと久し振りに同期飲みをした。
時計の針はもう次の日を指しているのに
「帰ってきてる…わけないか…」
家の中は真っ暗だった。
「おっと…」
ヒールを脱ごうとしてよろける。
お酒で寂しさを紛らわそうなんて柄にもないことをしてみた結果、いい歳をした女がみっともないこの有り様。
「ふぅ」
私は靴を脱ぎ捨てるとそのままバスルームに向かった。
おぼつかない指先でボタンを外しブラウスをかごに落とすと
…あ
涼さんのYシャツが目にとまる。
私は屈んでそのシャツを取り胸に抱きしめた。
…涼さんの匂いだ
ここ一週間、彼は仕事が忙しく私が眠りに落ちた頃に帰宅して目覚める前には出社するというすれ違いの生活を送っていた。
職場では会えるけど何せ忙しい人だ。
朝コーヒーを持っていったときに上司と部下という立場で言葉を交わすぐらいしかない。
「…涼さん」
同棲してても夜中に運良く目覚めて背を向けて寝る彼の背中に頬をつけることぐらいしか出来ない日々
私はそのムスクの香りが残るYシャツに腕を通して彼の匂いを纏い自分で自分を抱きしめた。
…私酔ってるな
長すぎるシャツの袖を詰まんで涼さんを想うと
「モモ?」
「…!?」
鏡に映るのはYシャツの持ち主
「これは…その…」
咎められたわけでもないのに私はシャツを脱ごうと背を向けると
「飲みに行ってたの?」
「…あ…えと…」
「アルコールの甘い香りがする」
涼さんはその事には触れずに後ろから抱きしめてくれた。
…涼さんの匂いだ
久しぶりの彼の香りに心が跳ねる。
抱きしめてもらうだけで不安で押し潰されそうだった心が充たされていくのがわかった。
「モモ」
掠れた声が耳を擽る。
涼さんも私と同じ気持ちだったらいいな
私は涼さんの腕に手をまわして指を絡めると涼さんは掠れた声で私の名前を呼んで
「…ごめん」
「…え」
「本当にごめん…」
何度も謝った。私はそんな彼に不意に言葉を紡ぐ。
「私たち…ずっと一緒ですよね」
願いを込めて絡めた指を強く握ったけどそれはほんの一瞬、たった何秒かだった。
涼さんは指を解くと髪にキスをして
「早く入ってきな」
私の問いかけに答えもせずにバスルームを後にした。
ひとりで家に居ても余計なことばかり考えてしまうので麻里と白石くんと久し振りに同期飲みをした。
時計の針はもう次の日を指しているのに
「帰ってきてる…わけないか…」
家の中は真っ暗だった。
「おっと…」
ヒールを脱ごうとしてよろける。
お酒で寂しさを紛らわそうなんて柄にもないことをしてみた結果、いい歳をした女がみっともないこの有り様。
「ふぅ」
私は靴を脱ぎ捨てるとそのままバスルームに向かった。
おぼつかない指先でボタンを外しブラウスをかごに落とすと
…あ
涼さんのYシャツが目にとまる。
私は屈んでそのシャツを取り胸に抱きしめた。
…涼さんの匂いだ
ここ一週間、彼は仕事が忙しく私が眠りに落ちた頃に帰宅して目覚める前には出社するというすれ違いの生活を送っていた。
職場では会えるけど何せ忙しい人だ。
朝コーヒーを持っていったときに上司と部下という立場で言葉を交わすぐらいしかない。
「…涼さん」
同棲してても夜中に運良く目覚めて背を向けて寝る彼の背中に頬をつけることぐらいしか出来ない日々
私はそのムスクの香りが残るYシャツに腕を通して彼の匂いを纏い自分で自分を抱きしめた。
…私酔ってるな
長すぎるシャツの袖を詰まんで涼さんを想うと
「モモ?」
「…!?」
鏡に映るのはYシャツの持ち主
「これは…その…」
咎められたわけでもないのに私はシャツを脱ごうと背を向けると
「飲みに行ってたの?」
「…あ…えと…」
「アルコールの甘い香りがする」
涼さんはその事には触れずに後ろから抱きしめてくれた。
…涼さんの匂いだ
久しぶりの彼の香りに心が跳ねる。
抱きしめてもらうだけで不安で押し潰されそうだった心が充たされていくのがわかった。
「モモ」
掠れた声が耳を擽る。
涼さんも私と同じ気持ちだったらいいな
私は涼さんの腕に手をまわして指を絡めると涼さんは掠れた声で私の名前を呼んで
「…ごめん」
「…え」
「本当にごめん…」
何度も謝った。私はそんな彼に不意に言葉を紡ぐ。
「私たち…ずっと一緒ですよね」
願いを込めて絡めた指を強く握ったけどそれはほんの一瞬、たった何秒かだった。
涼さんは指を解くと髪にキスをして
「早く入ってきな」
私の問いかけに答えもせずにバスルームを後にした。