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BLUE MOON

第9章 責任


「桃子…」

会議室にモモが居るなんて連れてきてくれた麻里ちゃんも知らなかっただろう。

窓越しに空を眺める後ろ姿を見た瞬間に雅とのことを知ってしまったのだとわかった。

「雅に会ったのか?」

魚住はモモの代わりに頷くとイスをクルリと回して俺に少しだけ背を向けた。

麻里ちゃんは事態が飲み込めない状態で扉のそばの壁に体を預ける。

二人きりで話すべきなんだろうけど…これでいいんだ。

「モモ…」

俺一人が悪いことを

「…」

モモにはなんの落ち度もないことを

「…ゴメン」

証人になってもらわなきゃいけない。

モモは空を見つめたまま

「何点でした?」

俺の言葉を無視して

「私は遊び相手として何点でしたか?」

冷めた声で言葉を紡いだ。

「遊び相手だなんて…そんなわけないだろ…」

いつもより小さく感じる背中でモモは語る。

「雅さんでしたっけ?あの人と比べて楽しかったですか?」

「そんなこと…」

今更だが キチンと俺の口から伝えるべきだったと後悔する。

「…聞いてくれないか」

話したことで何かが変わるのだろうか。

「モモ…聞いて」

茜色の空を見上げるモモは俺の顔を見もせず

「何を今さら聞くんですか?連絡もなく帰ってこなかった日はその人と過ごしてたって話を聞けって言うんですか?」

冷めた声で冷たい台詞を続ける。

「違う、それは違う…」

その声は必死に届けようとする俺の言葉を冷ましていった。

「私、何度も彼女と涼さんが一緒にいるところを見かけました」

「それは用事があったからで…」

「ふざけないで!」

言葉に熱がこもったその時、モモはやっと俺の顔を見てくれた。

「ふざけてなんか…いないよ…」

顔も大きな瞳も真っ赤に染めて

「じゃあどうして…私に結婚しようなんて言ってお見合いなんてしたんですか?」

乱暴に涙を拭きながらずっと心の中にしまってきたであろう言葉を並べる。

「いや、それは…本当に誰が相手でも断るつもりだったんだ」

「ウソ!嘘よ!」

「嘘じゃないって…」

俺は俯き声を上げて泣き始めたモモをゆっくりと力弱く包む。

「ごめん…」

俺の胸を力いっぱいに叩く華奢な腕。

「本当にごめんな…」

こんなにも愛した人を手離さなきゃいけないなんて

「…嘘つき!」

抱きしめながら時が止まればいいと思った。

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