BLUE MOON
第2章 恋心
…ハァ…ンッ
それは長くて甘いキスだった。
「悪い、調子に乗りすぎたな」
胸に頬を埋める私の体は宙を舞うようにフワフワとしていた。
「いえ…」
桜木チーフは私の髪を優しく撫でながらその体をそっと抱きしめてくれていた。
「いつまで顔を隠してんだ?」
「…もう少し待ってください」
キスははじめてじゃないけど…こんなに大人なキスははじめてだった。
私のファーストキスはパパとママがまだ健在だった高校生の時
人気があったサッカー部の先輩で夏の終わりの花火大会に誘われてキスをしてそのまま一年ほどお付き合いした。
胸の高鳴りはあのときと一緒だけど、同じキスなのに桜木チーフとのキスは深くて甘く私を蕩けさせた。
「ホント、可愛いな」
「またそんなこと…」
今 顔をあげたら100%笑われる。
だって私の顔は今真っ赤に染まっているだろうから。
「涼さんは過大評価しすぎです」
「そんなことないと思うぞ?」
チーフは私の体を揺らしながら髪にキスをした。
「キャッ…」
そして少し屈み込んで髪の上から私の耳にもう一度キスを落とすと
「俺をメロメロにさせといてよく言うねぇ」
「メロメロって…」
「あっ、やっぱりオッサン臭い?」
「いいえ、涼さんらしいです」
私の顔をあげさせた。
「やっとこっち向いた」
「ウフフ…」
瞳を重ねて同じ空気、同じ時間を共有する。
ダメだ…
これ以上溺れると…戻れなくなる
「あの…」
「ん?」
まだ現実に戻れるかもしれない今、きちんと話さなければ…
「帰りの車で少し重い話をしてもいいですか?」
「重い話?」
「はぃ…」
私が不幸にしてしまうかもって言った話。
「いいよ、モモの話なら。重かろうが軽かろうが全部聞いてあげる」
この人なら話ても私の全部を受け入れてくれるんじゃないかって
「ありがとうございます」
まっすぐに重なった視線がそう思わせる。
「心配しないで。どんな話でもちゃんと受け入れるし 二人で乗り越えよう」
私の胸のうちを知っているかのようにもう一度 重ねた唇。
最後にならないでと心を込めて重ねた。
月の光が届かない真っ黒な海
どっちに転んだってそれが私の運命なんだ。
私は新しい一歩を自らの力で歩もうと細く見える月に宣言した。