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BLUE MOON

第3章 鼓動


「適当に座ってください」

モモはベッドのシワを直すようにポンポンと叩くと低いドアを抜けてキッチンへと姿を消した。

…なるほどな

想像いたよりも狭い部屋だった。

「冷たいお茶でいいですか?ビールも冷えてますよ」

モモは冷蔵庫からヒョイと顔を出して俺に訪ねる。

「こっちにおいで」

「お茶とビール…」

「いいからこっちにおいで」

モモは両手にそれを持って俺の横にちょこんと正座する。

そして何を思ったのかペコリと頭を下げて

「ゴメンナサイ…これからはちゃんと確認してドアを開けます」

なんだよ…俺がまだ怒ってるとでも思ったか

「それもそうだけど…」

チラリと俺の目を見てまた俯く。

「頭をぶつけてしまったのは…そうですよね。私がもっと早く気づけば…」

そうだな、怒ってるっちゃ…怒ってる。

「バカだな」

俺はモモの手から飲み物を貰ってテーブル置き

「…あ」

「ビールよりもお茶よりも、とりあえずモモだろ」

小さな手を引き寄せて力いっぱい抱きしめた。

ゆっくりと俺の背中に華奢な腕が回る。

「涼…さん…」

甘くて柔らかいモモの香りに心がゆっくりと満たされていく。

この部屋についてまだ5分も経っていないのに

「モモ…」

真っ赤に染まる頬を両手で包み 愛らしい唇に視線を落とす。

「…ん」

やけに力が入っている唇

下手くそなキス

一ヶ月前と全線変わってないことに安堵するオレ

「く…苦しぃです」

年甲斐もなくまた調子に乗ってしまったオレ

肩で息をしながら真っ赤に染めて恥ずかしがるモモをもう一度胸に閉じ込める。

するとキミは俺の背中をギュッと抱きしめて

「遅いです」

「遅い?」

「夕方なんてあやふやな言い方するから…待ちくたびれました」

「ゴメン」

キミは不思議な娘だ。

連絡先を知りたいと言っておきながら一度も電話もメールもLINEもしてこないくせに もっと早く来てほしかったなんて言い出す。

あんまりキミが可愛いから

「引越しが思いの外長引いちゃって」

「引越し?」

キミのお手製のハンバーグを食べてから言おうと思ったのに

「モモと一緒に住みたいなって」

「いっ!?…一緒に?!」

「こうして毎日モモを抱きしめていたいと思って」

溢れそうなほど目を大きく開けて見つめてくれるキミにもう一度キスをした。

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