BLUE MOON
第3章 鼓動
給湯室で出逢ったあの日
「桃子…」
花束の彼が大切な人になるなんて想像もしていなかった。
その彼は今、私をまっさらなシーツに沈めて優しく髪を撫で
「…好きだよ」
暗闇でもわかるアーモンド色の瞳を細めて見つめてくれる。
「緊張してる?」
「…うん」
言葉がうまく出てこない。
「オレも」
「…ウソ」
髪を撫でていた大きな手が私の指先に絡まると
「ウソじゃないよ。ほら」
その手を彼の胸へと添えた。
Tシャツ越しにでも伝わる彼の大きな鼓動。
こういうことに慣れてるはずなのに
「ね?」
「…本当だ、ドキドキしてます」
ドックドックと力強い鼓動は私の手のひらにも伝わる。
「桃子…」
彼は私の額に軽く唇を落とすと
「好きだ…モモが呆れるぐらい」
顔を隠していたときと同じように唇を落として
「年甲斐もなく…今の俺は桃子しか見えてない」
私の心の扉を開いていく。
「私だって…」
「私だって?」
「負けてない…と思います」
「思います…か」
「いえ…」
本当に涼さんはズルい
「負けてません」
私にこんな台詞を吐かせるんだから。
でも きっとこれも涼さんの心遣いなんだろうな
「ウフフ…」
ほら いつの間にか私はアーモンド色の瞳に魔法をかけられて笑みまで溢してる。
でも…
「嬉しい言葉を貰えたけど」
「あ…」
重なる瞳が一瞬で色香を醸し出し
「俺はどんな勝負事には負けるつもりはないので」
私の心を抑えつける。
「圧勝してることを」
「…待って…涼さん…」
「しっかりモモの体に教えてあげるから」
涼さんは色香が漂う瞳を細めると同時に大きな手をパジャマの中に入れてきた。
「…イヤっ」
「ならやめる?」
気が付いたときには自分でも追い付けないほどのスピードで涼さんへの想いが加速していた。
もう戻れない。
「やめないで…下さい」
「阿保…オジサンを煽ってどうすんだ」
「スミマセ…んっぅ」
始まりのキスは今までとは比べられないほど甘い。
伸びてくる舌はすぐに私の舌を探しだして絡み付き
「下手くそ」
「…んあっ」
私を支配していく
知らなかった…
キスがこんなに気持ちいいなんて
「…ハアッ」
「まだだ」
絡めた指先を握ると涼さんも同じように握り返してくれた。